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M&A LINEコラム【第11回】
私的整理の最新トピックス

私的整理の最新トピックス(新型コロナ特例リスケジュール)

私的整理は法的整理と異なり決まった方法はありませんが、事業再生等のためのガイドラインが公表されています。これをベースにした再生支援スキームもあり、私的整理の方法はかなり整備されてきています。
ただ、今回のコロナ禍においては、私的整理の前に活用できる、債務の元本返済の猶予が受けられる中小企業庁による支援も整備されました。

私的整理とガイドライン

過剰債務などで事業が立ち行かなくなったときに取りうる手段のひとつが私的整理です。私的整理は、法的整理と異なり決まった手続きがなく、債権者との話し合いによって債務を整理する方法です。調整がうまくできれば、会社の債権につなげることも可能です。

私的整理には決まった手続きはないものの、債務整理や事業再生をより進めやすくするために、2001年に「私的整理ガイドライン」が公表されました。このガイドラインには、債務整理や事業再生計画を作るための手続き方法などが定められています。

私的整理を支援するスキーム

私的整理ガイドラインができたことで、これをもとにした再生スキームが作られました。整理回収機構(RCC)、中小企業再生支援協議会、地域経済活性化支援機構(REVIC)、事業再生ADRなどがその一例です。

整理回収機構(RCC)は、金融機関からの不良債権買取や企業再生などを通して支援するものです。
中小企業再生支援協議会は、都道府県ごとに置かれた公的な機関で、専門家に相談したり再生の支援を受けたりすることができます。
地域経済活性化支援機構(REVIC)も公的な機関で、専門家に相談しながら事業再生計画案の策定ができます。同機構自らがスポンサーとなって、債権買取や出資を通して事業再生を進めていくケースもあります。
事業再生ADRは、ADRという「裁判外で紛争を解決するスキーム」を活用したものです。事業再生実務者協会が選定した専門家によって、再生計画の策定や債権者との調整等が行われ、事業再生を進めていくものです。

こういったスキームが作られたことで、よりスムーズに私的整理を進められるようになりました。そのため現在では、私的整理ガイドラインそのものや整理回収機構を利用して私的整理が進められるケースはほぼなくなりました。

私的整理の前に活用できる「特例リスケジュール」

上記のような支援方法がありますが、新型コロナウイルスによって経営状態が悪化した企業であれば、私的整理の前に、借入金の返済猶予を受けて資金繰りを一時的に改善する方法もあります。それが公的機関である中小企業再生支援協議会による「新型コロナ特例リスケジュール」です。
新型コロナウイルスによる1度目の緊急事態宣言を受けて、2020年4月1日に制定された「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール実施要項」に基づくものです。

この制度を利用すれば、同協議会が中小企業に代わって、各金融機関への元金返済猶予の要請を行ってもらうことができます。金融機関からの支援姿勢が確認できれば、資金繰りに関する計画を策定し、最大1年間の返済猶予を受けてコロナ収束までの資金繰りを改善させられるものです。
同協議会による通常の支援では、事業改善の見通しが立っていなければ支援を受けることができませんでしたが、この制度ではその支援対象を拡充するものとなっています。

特例リスケジュールによる支援の流れ

新型コロナ特例リスケジュールによる支援は、次のような流れで進められます。

1.中小企業再生支援協議会に相談
中小企業再生支援協議会は各都道府県に設置されています。その相談窓口に電話で問い合わせたうえで、売上や借入金の状況などの必要書類を提出します。
2.専門家によるヒアリング
3.各金融機関に専門家から支援姿勢を確認してもらう
4.元金返済猶予の要請
各金融機関に一括で元金返済猶予の要請をし、債務の元金返済をストップします。
5.資金繰り計画、特例リスケジュール計画を策定
6.事業再生の支援(希望者のみ)
毎月の資金繰りを確認するほか、コロナ収束後の事業再生サポートを受けることも可能です。

コロナ禍にあえぐ事業者にとって、借入金の元本返済は資金繰りに大きな影響を与えます。あくまでリスケジュールであり、金融機関に債権放棄してもらうものではないため、いずれ返済しなければならないものですが、元本返済を1年間猶予してもらうことができれば、かなりの負担軽減になるのではないでしょうか。
金融機関としても、貸し付けが不良債権化させずに済むため、コロナ収束後の再生を期待できるのなら、前向きに検討してくれる可能性もあります。私的整理だけを選択肢として考えるのではなく、新型コロナ特例リスケジュールによる事業再生も選択肢になるでしょう。

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