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M&A LINEコラム【第13回】
経営者保証ガイドラインに関する最新情報

経営者保証ガイドラインに関する最新情報

金融機関が融資する際に経営者に保証を求めるかの基準となっている「経営者保証に関するガイドライン」ですが、事業承継を円滑に進めるための特則が定められました。後継者を見つけやすくするためにも、現在の経営者だけでなく後継者も債務保証を軽減させられるよう、特則の内容を見ておきましょう。

「経営者保証に関するガイドライン」の特則が定められた

「経営者保証に関するガイドライン」は、経営者保証なしに融資が受けられる条件を明らかにするなどの目的で作られたものです。

中小企業の経営者が融資を受ける際、多くの場合に経営者保証が求められています。独立行政法人中小企業基盤整備機構が平成30年1月に行った調査(※1)では、中小企業・小規模事業者から借入のある企業のうち86.7%が、すべてまたは一部の借入に経営者保証を提供しているようです。これは、ガイドラインに沿った融資判断の結果によるものということができるでしょう。

しかし、事業承継においては、経営者保証が問題になっています。経営者保証をしなければならないことが原因で、後継者候補が承継を拒否するケースがあるようです。
親族内承継ができず、社内外の人材を後継者候補とした場合には、そのような事態になってしまう可能性は高くなるでしょう。

経営者保証が問題で事業承継が進まないのは問題であるため、令和元年6月21日に閣議決定となった「成長戦略実行計画」において、ガイドラインに特則を設けることが明記されました。それを受けて、令和元年12月に、「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則(※2、以下『特則』)」が公表されました。

※1 中小機構「経営者保証ガイドラインアンケート結果」
https://www.smrj.go.jp/doc/research_case/keieisha_question2017.pdf
※2 一般社団法人全国銀行協会
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_sp.pdf

特則に打ち出された方向性

特則では、債権者となる金融機関に対し、大きく2つの方向性を打ち出しています。ひとつは「前経営者と後継者の双方から二重に保障を求めないこと」、もうひとつは「経営者保証を後継者に当然に引き継がせるものとせず、事業承継に与える影響を考慮して、慎重に判断すること」というものです。
具体的にどのような内容なのかを見ていきましょう。

前経営者・後継者の双方との二重保証を求めない

原則として、前経営者と後継者の双方に保証を求める二重保証を求めないこととしています。どうしても必要な場合には、例外的に二重保証が許容されるとされており、次のような事例が挙げられています。

一時的に二重保証となる場合
前経営者が死亡し、後継者から保証を求める場合などで、事務手続き完了後に前経営者の保証が解除される予定の場合

後継者が前経営者の保証解除をしないよう求めている場合
後継者に保証を求める場合で、法人から前経営者に対する多額の貸付金等の債権が残っているなど、前経営者に対する保証を解除することが著しく公平性を欠くとして、後継者が前経営者の保証解除しないことを求めている場合

こういった事例が挙げられていますが、特則には「事例の拡大解釈による二重徴求を行わないように」、「安易に二重徴求が継続しないよう、適切に管理・見直しを行うことも必要」とも記されています。

後継者との保証契約は慎重に判断する

特則では、事業承継の阻害要因になりかねないことを意識して、経営者保証は後継者に当然に引き継がせるものではないというスタンスを取っています。保証を求めることで、事業承継が頓挫し、地域経済の持続的な発展への悪影響も考慮しているためです。

ガイドラインの要件の多くを満たしていない場合(経営者保証が必要な場合)でも、総合的な判断として経営者保証を求めない対応ができないかを柔軟に検討することを求めています。具体的には、事業性評価や事業承継計画の内容・成長可能性を考慮したり、「経営者保証コーディネーター」による確認を受けた結果などを踏まえたりするなどの検討が挙げられます。

また、やむを得ず後継者に保証を求めることとなった場合でも、保証金額を適切に設定する、代替的な融資手法を活用するなどの対応も検討すべきとされています。

第三者となる場合の前経営者との保証契約

令和2年4月1日施行の改正民法によって、第三者保証を求めないようにすることが原則となりました。
前経営者が、役員ではなく、議決権も過半数を有していないような場合は、第三者にあたるとされるため、保証継続の必要性を慎重に判断すべきとされています。

融資を受ける企業が考えておくべきこと

このような特則ができたとはいえ、経営者保証なしで簡単に事業承継できるというわけではありません。事業承継にあたって、後継者にかかる保証という負担を少しでも軽減したいのであれば、時間がかかっても次のようなことを少しずつでも進めていくことが大切です。

・法人と経営者の関係を明確に区分・分離する
・財務基盤を強化する
・財務状況を正確に把握し、情報開示を通して経営の透明性を確保する

これらのことを通して、後継者の経営者保証にかかる負担を軽減させることができるかもしれません。ただ、これは「後継者が引き継ぎたいと思える企業」の条件ともほぼ一致します。
結局は、金融機関にとっても後継者にとっても、ひいては働く従業員にとっても、魅力ある企業体質にしていくことが求められているとも言えるでしょう。

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